「めまいがある時は、安静にしていたほうがいいですよね?」
患者さんからよくいただく質問です。
確かに、激しいめまい発作の最中に無理して動くのは良くありません。
しかし、症状が落ち着いたあとも長く動かない状態が続くと、かえって治りが遅くなることが分かっています。
近年、医療・リハビリの世界では「前庭リハビリテーション」という考え方が広まり、
「動くこと」自体が治療になると科学的にも証明されています。
ではなぜ、動くとめまいが治りやすくなるのか?
今回は整体師としての臨床経験と最新の生理学をもとに、そのメカニズムを分かりやすく解説していきます。
目次
めまいの正体は「脳の混乱」だった
めまいというのは「耳の病気」だと思われがちですが、
実際には**“脳が身体の情報をうまく整理できていない状態”**です。
私たちは普段、
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耳の奥(三半規管・耳石器)からの平衡情報
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目からの視覚情報
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足裏や筋肉からの体性感覚
この3つを脳が統合し、「自分の身体は今どう動いているか?」を常に計算しています。
ところが、風邪やストレス、姿勢の崩れなどで一部の情報がズレると、
脳が「体が動いているのか止まっているのか分からない!」と混乱。
これが“めまい感”として現れます。
つまり、めまいとは単に「耳の異常」ではなく、
脳と身体の情報バランスの乱れなのです。
歩くことで脳が再学習する
この“情報のズレ”を治すカギが、「動くこと」です。
歩行には、頭・目・体幹・足のあらゆる部位がリズミカルに連動するという特徴があります。
そのため、歩くだけで
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三半規管(回転感覚)
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耳石器(上下・左右の加速度感覚)
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視覚(動く景色の流れ)
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体性感覚(足裏や関節の圧力)
が同時に刺激されます。
これを脳が再び統合して整理していくプロセスを「前庭代償(vestibular compensation)」と呼びます。
つまり、歩くことは自然な“前庭リハビリ”なのです。
最初のうちは、動くと少しフラッとするかもしれません。
しかしこれは悪化ではなく、「脳が再学習している証拠」。
少しずつ動きに慣れてくると、平衡感覚のズレが整い、
めまいそのものが軽くなっていきます。
歩くことで自律神経も整う
めまいの原因の一つに「自律神経の乱れ」があります。
特にストレス性めまいや起立性のふらつきは、交感神経と副交感神経のバランス崩壊が関係しています。
歩くことは軽い有酸素運動であり、呼吸と心拍を自然に整えます。
また、朝の光を浴びながら歩くと、脳内でセロトニンが分泌され、
「気分の安定」や「姿勢の調整」に関わる神経系が活性化します。
実際、朝の10〜15分のウォーキングを習慣化することで、
めまいや倦怠感が改善したという報告も多くあります。
歩くという行為は、心と体の自律を取り戻す最もシンプルな治療法でもあるのです。
「動くと悪化しそう…」を克服するコツ
めまいを経験した人ほど、「動くとまたフラつくのでは」と怖がってしまいます。
しかし、動かない期間が長いほど前庭系が刺激を受けず、
脳の“安定プログラム”が鈍くなっていきます。
動くことは“めまいを再教育するチャンス”と考えましょう。
🔸コツは「無理なく段階的に慣らす」こと。
最初は以下のような流れが安全です👇
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立って頭をゆっくり左右に動かす(視線を動かさずに)
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その場で足踏み(ゆっくり10〜20回)
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短い距離を歩く(壁沿い・室内でOK)
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外を5〜10分歩く(できれば朝日を浴びながら)
このように「頭の動き」「視覚の流れ」「重心移動」に徐々に慣らしていくと、
脳が“動いても大丈夫”と再認識してくれます。
実践!めまい改善ウォーキング3ステップ
ここからは、整体的な観点を含めた実践法を紹介します。
STEP1:立位での前庭刺激
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両足を肩幅に開き、軽く膝をゆるめる
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顎を引き、視線を正面に
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頭を左右にゆっくり10回動かす(目は動かさない)
👉 首の固有受容器と三半規管を協調させ、脳のバランス感覚を再起動させます。
STEP2:足踏み+視線トレーニング
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その場でゆっくり足踏み(10〜20歩)
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その間、視線を一点に固定 or 水平に動かす
👉 動きながら視覚と体感覚をリンクさせることで、歩行中の安定感を高めます。
STEP3:外歩きで脳をリセット
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1日10分〜20分を目安に、自然なペースで歩く
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途中で景色を眺めたり、頭を少し動かしたりしてもOK
👉 屋外の景色変化が「動く世界」と「安定した身体」を再び結びつけてくれます。
慣れてくると、歩行後に頭のモヤモヤやふらつきが軽減しているのを実感できるでしょう。
動いたほうが良いめまい・注意が必要なめまい
ここで大切なのは、すべてのめまいに“歩行療法”が有効というわけではないという点です。
✅ 動いた方が良いタイプ
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良性発作性頭位めまい症(BPPV)
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前庭神経炎の回復期
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自律神経性めまい・ストレス性めまい
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姿勢性・頸性めまい(首のこり由来)
これらは前庭系や感覚統合の再教育で改善しやすいタイプです。
⚠️ 注意が必要なタイプ
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脳梗塞・脳出血など中枢性のめまい
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強い頭痛・しびれ・ろれつ障害を伴う場合
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急な難聴を伴うメニエール病発作期
こうした場合は、まずは医療機関での診断が最優先です。
無理に動く前に、「安全な動ける状態」かどうかを確認しましょう。
まとめ:動くことは「治すこと」
めまいは「安静にするもの」というイメージが強いですが、
多くの場合は「動きながら治すもの」です。
歩くことで、
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脳が平衡感覚を再学習し、
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自律神経が整い、
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恐怖や不安が減り、
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筋肉と血流が正常化します。
つまり、動くこと=回復を促す最強の薬なのです。
整体師として現場で見ていても、
「怖がらずに少しずつ動けるようになった人ほど回復が早い」というのが実感です。
動く勇気が、脳と身体を再び調和させます。
今日からほんの数歩でも、あなたのペースで歩いてみてください。
その一歩が、めまい克服の第一歩になります。
もし動いても治らない場合は、自律神経そのものの施術が必要となります。一人で悩まず、まずは当院のスタッフにご相談くださいませ。
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