肩が原因ではない違和感
「左肩が痛くて、腕が上がらないんです」
そう言って来院された患者さん。いわゆる五十肩の症状で、日常生活にも支障が出ている状態でした。
ただ、全身を評価していく中で、「肩だけの問題ではなさそうだ」という違和感がありました。
見えてきた捻じれの連鎖
立位を観察すると、右足に体重を乗せるクセが強く、身体はわずかにねじれていました。骨盤は右に回旋し、それに対して胸郭は左に回旋。さらに頸椎は右に回旋してバランスを取っている状態です。
いわば、下から上へと続く“回旋の連鎖”ができあがっていました。
過去の手術が体幹に与えていた影響
さらに既往歴を確認すると、盲腸の手術と帝王切開の経験がありました。
腹部を触診すると、瘢痕部の滑走性は低く、体幹前面の動きに制限が見られました。本来であれば体幹は柔らかく動きながら負担を分散しますが、この方の場合はその機能がうまく働いていない状態でした。
負担の行き場が左肩だった
体幹で処理できないストレスは、どこか別の場所で補われます。この方の場合、その役割を担っていたのが左肩でした。
さらに頸部では、上位頸椎、特にC2レベルで右側に圧痛があり、左回旋の制限が確認されました。首の上部で軽いロックがかかり、動きの自由度が低下している状態です。
体幹のねじれ、呼吸の制限、頸椎のロック。それらが重なり、左肩に過剰な負荷が集中していたと考えられます。
肩を治そうとしない施術
このケースで重要だったのは、「肩を直接どうにかしようとしないこと」でした。
施術ではまず腹部の瘢痕にアプローチし、体幹前面の滑走を回復。次に右足に偏っていた荷重を整え、胸郭の動きを引き出し、頸椎の回旋制限を調整していきました。
結果として肩が動き出す
すると、肩自体をほとんど触れていないにもかかわらず、腕の挙上は徐々にスムーズに変化していきました。
身体は部分ではなく、全体でバランスを取りながら機能しています。一箇所の痛みの裏側には、こうした全身のつながりが隠れていることも少なくありません。
視点を変えると見えるものがある
もし「肩を治療しているのに改善しない」と感じている場合、問題は肩そのものではなく、別の場所にある可能性もあります。
身体を一つのつながりとして捉えることで、これまで見えなかった原因に気づけることがあります。
痛みの正体は、思っているよりも少し遠い場所にあるのかもしれません。