鏡で背中を見たときに、肩甲骨が肋骨から浮き出て「羽」のように見えることはありませんか?
これがいわゆる 翼状肩甲(よくじょうけんこう) と呼ばれる状態です。
本来、肩甲骨は肋骨に沿って安定して張りつき、腕や肩の動きにあわせてスムーズに回旋したり傾いたりします。しかし翼状肩甲になると、肩甲骨が浮き上がって安定せず、様々な不調を招く原因となります。
原因としては、
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前鋸筋(ぜんきょきん)の筋力低下や機能不全
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小胸筋(しょうきょうきん)の短縮による肩甲骨の引き込み
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僧帽筋下部・菱形筋など肩甲骨を安定させる筋肉の弱化
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長胸神経の麻痺など神経系の問題
などが考えられます。
見た目の問題だけでなく、体の不調や痛みに直結するのが翼状肩甲の厄介な点です。では実際に、どんな不調を招くのかを見ていきましょう。
肩こり・首こりの悪化
翼状肩甲になると、肩甲骨が胸郭にしっかり張りつかず、常に不安定な状態になります。
その結果、肩甲骨を安定させようとして 僧帽筋上部や肩甲挙筋 といった首から肩にかけての筋肉が過剰に働きます。
これが長時間続くと、いわゆる 慢性的な肩こり・首こり へとつながります。
さらに、肩甲骨が浮いているために「肩甲骨を寄せる」動作がスムーズにいかず、マッサージを受けてもその場しのぎになってしまうことが多いのです。
肩の動きが悪くなる(可動域制限)
肩甲骨は、肩関節の動きと連動して動く「土台」の役割を担っています。
腕を挙げるとき、上腕骨だけでなく肩甲骨も一緒に回旋し、可動域を確保します。これを 肩甲上腕リズム と呼びます。
翼状肩甲ではこのリズムが乱れるため、腕を上げようとすると肩甲骨がうまく上方回旋できず、動きが途中で詰まります。
「バンザイが最後までできない」「肩がつっぱる」「動かすとゴリゴリ音がする」などの症状が出やすくなり、放置すると 五十肩や肩関節周囲炎 のリスクが高まります。
スポーツ障害やケガのリスク増加
スポーツにおいても翼状肩甲は大きなマイナス要素となります。
投球動作・水泳のストローク・格闘技のパンチなど、肩甲骨の安定性が求められる場面で、翼状肩甲があると 力が効率的に伝わりません。
その結果、余計な負担が腱板(ローテーターカフ)や肩関節前面に集中し、
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インピンジメント症候群(肩の引っかかり)
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腱板損傷・腱板断裂
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野球肩や水泳肩
といったスポーツ障害を招きやすくなります。
プロ選手だけでなく、趣味でスポーツを楽しむ一般の方でも、翼状肩甲を放置したまま運動を続けることで慢性的な痛みにつながるケースが少なくありません。
呼吸が浅くなる・自律神経に影響
翼状肩甲の背景には、小胸筋が硬くなって肩甲骨を前傾させているケースが多くあります。小胸筋が硬直すると肋骨の動きが制限され、胸郭が十分に広がらなくなります。
その結果、胸式呼吸が制限されて浅い呼吸 になりやすいのです。
呼吸が浅くなると酸素供給が不十分になり、体の疲労感や集中力低下を招きます。
また、呼吸と自律神経は密接に関係しているため、浅い呼吸は交感神経を優位にし、 不眠・イライラ・自律神経の乱れ といった症状を助長することもあります。
姿勢が崩れて見た目も悪化
翼状肩甲は見た目にも大きな影響を及ぼします。背中がゴツゴツして「猫背・巻き肩」が強調され、実年齢より老けて見えたり、疲れている印象を与えます。
さらに、姿勢が崩れることで骨盤や脊柱にも悪影響が及び、全身のバランスが乱れます。
特にデスクワークやスマホの長時間使用が習慣化している現代人にとって、翼状肩甲はますます悪化しやすい環境が整っているともいえます。
翼状肩甲を放置しないためにできること
翼状肩甲の改善には、
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小胸筋のストレッチ
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前鋸筋のトレーニング(セラタスパンチやウォールスライド)
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僧帽筋下部・菱形筋の強化(Yレイズなど)
が効果的です。
施術では、硬くなった筋肉をリリースし、働きにくい筋肉を促通することで改善をサポートします。
セルフケアと組み合わせることで、見た目だけでなく肩や首の痛み・呼吸のしやすさまで変わってきます。
まとめ
翼状肩甲は「肩甲骨が浮き出て見えるだけ」の問題ではありません。
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肩こり・首こりの慢性化
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肩の可動域制限
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スポーツ障害のリスク増加
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呼吸の浅さ・自律神経の乱れ
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姿勢・見た目の悪化
といった 5つの不調 を招き、生活の質を大きく下げてしまいます。
もし鏡で肩甲骨が浮いて見えたり、肩や首のコリがなかなか改善しない場合は、翼状肩甲の可能性があります。
早めに専門家のチェックを受けて、日常的なセルフケアを取り入れることをおすすめします。
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