季節の変わり目になると、「朝、顔を洗おうとしたらギクッときた」「くしゃみをした瞬間に動けなくなった」──
そんな患者さんが一気に増えてきます。
特に11月〜2月の寒い時期は、ぎっくり腰(急性腰痛症)の相談件数が最も多い季節。
これは単なる“冷え”のせいではなく、体温・血流・自律神経のバランスが一気に崩れるからです。
気温が下がると血管が収縮し、筋肉への酸素供給が低下。
そこに、年末の忙しさや睡眠リズムの乱れなどのストレスが加わることで、
「筋肉が硬いのに神経はゆるむ」というアンバランスな状態が生まれます。
これこそが、秋冬のぎっくり腰多発の背景です。
目次
冷えが筋肉を固め、腰を壊すメカニズム
冷えによって血流が悪くなると、筋膜や筋線維の“滑り”が悪くなります。
特に腰回りの筋肉(多裂筋・腰方形筋・大臀筋など)は、姿勢保持のために常に働いているため、
冷えの影響を受けやすく、慢性的な張りが蓄積しやすい部位です。
さらに、寒いと人は無意識に体を丸めます。
猫背姿勢が続くと、骨盤が後傾し、腰椎のカーブが減少。
この状態で重い物を持ち上げたり、くしゃみをしたりすると、
腰の筋膜が“張りついた状態”から一気に引き延ばされ、損傷してしまうのです。
つまり、「冷え=血流低下+姿勢の変化+筋膜の拘縮」が同時に起き、
結果としてぎっくり腰のリスクを高めてしまうわけです。
副交感神経のバランス崩壊が引き金に
意外に知られていませんが、ぎっくり腰は「リラックス時」に起きることが多いです。
「仕事が一段落した夜」「お風呂上がり」「休日の朝」──これらはすべて副交感神経が優位な時間帯。
本来、副交感神経は体を休ませる働きをします。
しかし、筋肉が冷えて硬くなった状態で副交感神経が優位になると、
筋肉の“張力バランス”が崩れ、支えを失った関節や筋膜に急なストレスがかかります。
たとえば、夜の入浴後に腰をひねった瞬間に「ピキッ」とくる。
あるいは、朝布団から起き上がろうとした瞬間に「ズキッ」と痛みが走る。
これらはまさに、冷え+副交感神経のバランス崩壊が引き金になっている典型例です。
発症が多い時間帯は“朝と夜”!
臨床的にも、ぎっくり腰の発症が多いのは
①朝の起床直後 ②夜の入浴後〜就寝前 の2つの時間帯です。
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朝のリスク要因:
寝ている間に体温が低下し、筋肉がこわばっている。
血流が戻る前に急に体を起こすと、腰部に瞬間的な負荷がかかります。 -
夜のリスク要因:
副交感神経が優位になり、筋肉の張力が抜ける。
一日の疲労で筋膜がねじれた状態でリラックスすると、
支えを失った腰が“崩れる”ように痛みを出します。
このため、「朝いきなり起き上がらない」「お風呂上がりにストレッチをしすぎない」
といった“タイミングの注意”が予防のポイントになるのです。
予防のカギは「温め」と「ゆるめ」の順番
ぎっくり腰予防で多くの人がやりがちなミスは、「冷えた体をいきなり伸ばす」こと。
冷えたゴムをいきなり引っ張ると切れるのと同じように、
筋肉も温度が低いときに強く伸ばすと損傷しやすくなります。
正しい順番は──
①まず“温める”
②その後“ゆるめる(動かす)”
特に腰を直接温めるよりも、
・足首まわり(ふくらはぎ)
・下腹部(丹田あたり)
を温める方が全身の血流が効率的に上がります。
温まった状態で、骨盤まわりをゆっくり動かすことで、
筋膜の滑走が回復し、腰への負担を分散できます。
ぎっくり腰を防ぐ3分セルフケア
🕒 朝の「骨盤スイッチ体操」
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仰向けで膝を立て、骨盤を前後にゆっくり10回転がす。
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呼吸に合わせて、息を吐く時に骨盤を後傾・吸う時に前傾。
👉 これだけで深部筋(多裂筋・腸腰筋)が自然に目覚め、腰が安定します。
🌙 夜の「副交感リセット呼吸法」
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椅子に浅く座り、手をお腹に添える。
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鼻から4秒吸って、口から8秒吐く。
👉 呼吸筋の緊張がゆるみ、副交感神経の過剰反応を抑えます。
♨ 入浴後の「腰まわり温存ストレッチ」
・前屈やひねりストレッチは控えめに。
・代わりに、膝を抱えるようにして腰を丸め、深呼吸3回。
👉 血流を維持しつつ、腰部の筋膜をやさしくリセットできます。
まとめ:季節と神経のリズムを味方につけよう
ぎっくり腰は「重い物を持ったから」ではなく、
体温リズム・神経リズム・姿勢リズムがズレたときに起きる“体のサイン”です。
冷えや疲れを放置せず、
朝は「ゆっくり動き出す」
夜は「緩みすぎを防ぐ」
この2つを意識するだけで、秋冬のぎっくり腰リスクは大幅に減らせます。
そして本当に大事なのは、
「痛みが出る前から体を観察する」こと。
腰の違和感は、冷えやストレスの信号です。
日々の呼吸・姿勢・生活リズムを整えることで、
“ぎっくり腰にならない体”をつくることができます。
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