腱鞘炎は「使いすぎ」が原因と思われることが多いですが、実際にはそれだけでは説明できないケースもよく見られます。
「そんなに使っていないのに痛みが続く」
「家事レベルでも手首がつらい」
「湿布や固定では改善しない」
こうした状況には、別の要因が隠れていることがあります。
今回は整体の視点から、腱鞘炎が長引いてしまう理由をやさしく整理していきます。
目次
■ 1:腱鞘炎は“摩擦が増える”ことで起こる症状です
腱鞘炎は、腱と腱鞘(腱が通るトンネル)の摩擦が増えることで炎症が生じる症状です。
ただ、重要なのは
「なぜ摩擦が増えてしまっているのか」
という根本の部分です。
湿布で痛みが落ち着いても、摩擦の原因が解消されていなければ再発しやすくなります。
治りにくい腱鞘炎では、この“背景の要因”が取り除けていないことが多いです。
■ 2:腱がスムーズに動いていない「滑走不全」
腱は本来、スッと気持ちよく滑って動くようにできています。
しかし、以下のような条件が重なると動きに引っかかりが生まれます。
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筋膜の癒着
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腱のわずかな浮き上がり(アライメントの乱れ)
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肘〜手首のねじれ
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姿勢による前腕の負担
こうした要因が揃うと、大きな力を使っていなくても摩擦が増えやすくなります。
痛みが長引く方の多くに、この滑走不全がみられます。
■ 3:前腕の筋バランスの乱れが背景にあることも
腱鞘炎というと、指や手首だけの問題に思われがちですが、
実際には 前腕の筋バランス が崩れているケースが非常に多いです。
たとえば、
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親指側の筋が硬く、腱を引っ張り続けている
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小指側が弱く、負担が親指側に集中してしまう
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回内・回外の偏りがクセになっている
このような状態だと、日常動作の中でも負担が一点に集まり、痛みが出やすくなります。
筋肉量や力の強さとは関係なく起こりうる特徴です。
■ 4:痛みをかばうフォームも悪循環をつくります
腱鞘炎が長引く理由のひとつに、痛みをかばうことで生まれる「使い方のクセ」もあります。
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手首を固定しすぎて動きが悪くなる
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痛む指を守るために手首や肩に力が入りやすくなる
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ぎこちないフォームになり、さらに摩擦が増える
こうした悪循環は、気づかないうちに積み重なります。
整体では、この“使い方のクセ”まで含めて整えていきます。
■ 5:整体で行うアプローチ
整体でよく行う調整をまとめると、次のようになります。
●(1)腱のアライメント調整
腱が浮き上がっている部分を整え、摩擦を減らします。
痛みの出る動作にも関わる重要なポイントです。
●(2)前腕の深層筋の調整
腕橈骨筋や長母指外転筋など、腱を引っ張っている深層部分を緩めていきます。
●(3)手首の回内・回外のバランス改善
ねじれを正すことで、腱にかかる負担の偏りが解消しやすくなります。
●(4)肩〜肩甲骨の動きの見直し
手首だけで負担を受けている状態を改善し、全体で力を分散できるようにします。
●(5)再発予防のセルフケア
症状に合わせて、
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腱の滑走を助ける運動
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前腕のストレッチ
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日常の使い方のポイント
などをお伝えし、自然と負担が少なくなる状態をつくります。
■ 6:まとめ
腱鞘炎が治りにくいのは、
「使いすぎ」以外の背景が残ったままになっているため です。
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腱の滑走不全
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アライメントのくずれ
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前腕の筋バランスの乱れ
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痛みをかばうフォームの問題
こうした要因をひとつずつ整えていくことで、痛みが和らぎ、再発しにくい状態へと変わっていきます。
「長く続く腱鞘炎で悩んでいる」
「何をしても変わらなかった」
そんな方ほど、整体でお役に立てることがある症状です。


