日常生活で私たちは、無意識のうちに左右どちらか一方に重心を偏らせて生活していることがあります。たとえば、片足に体重を乗せて立つ癖がある人、いつも同じ肩にカバンをかける人など…。これを専門的には「片側支持(へんそくしじ)」と呼びます。
片側支持は、常に片方の脚や手、肩に重心や力をかける状態を指します。杖の使用もその一つ。歩行時に片手で杖を持ち、その反対側の脚に荷重をかけながら体を支えるという動作が繰り返されると、左右の筋肉バランスに大きな影響が出るのです。
では、なぜ片側支持が問題になるのでしょうか?次の章で詳しく見ていきましょう。
目次
片側支持が体に与える影響とは?
体は本来、左右対称に作られています。骨格も筋肉も、基本的にはバランスを保ちながら機能するように設計されているのです。
ところが、片側支持が日常的になると、このバランスが大きく崩れ始めます。具体的には以下のような変化が体に起こります:
-
骨盤が左右どちらかに傾く
-
脊柱(背骨)が横に弯曲してくる(側弯)
-
肩の高さが左右で変わる
-
片脚の筋肉だけが硬くなる or 弱くなる
-
反対側の膝や足首に負担が集中する
特に高齢者やケガからのリハビリ中に杖を使い始めた方は、元々筋力やバランス感覚が低下していることが多いため、片側支持の影響が強く出やすい傾向があります。
杖の使い方で悪化する「体の歪み」3パターン
ここでは実際に整体院でよく見られる“杖によって体が歪んだ”ケースを3つ紹介します。
パターン①:骨盤の横傾きによる慢性腰痛
杖を右手で持ち、左脚に荷重をかけすぎると、骨盤は左に下がり右に上がるような傾きが生まれます。この傾きが定着すると、片方の腰ばかりが引っ張られ、慢性的な腰痛に発展することがあります。
パターン②:肩の高さが非対称になり、頸肩のこりが増悪
杖を強く握りすぎる、または体を預けすぎると、肩が持ち上がって固定されてしまうことがあります。特に僧帽筋上部が緊張し、肩こりや頭痛、さらには五十肩のような症状を引き起こすことも。
パターン③:反対側の股関節や膝関節への負担
杖で支えない側の脚に荷重がかかりすぎると、股関節や膝関節がオーバーワークになります。これが長期間続くと、関節の変形や痛みの原因になりやすく、歩行そのものが苦痛になるリスクもあるのです。
無意識に「かばってしまう」動作が身体をゆがませる
人間の体はとても賢くできています。たとえば、ケガをしたときに痛みを避けるように自然と反対側の足に体重をかける。このような“かばう”動作は、短期的にはとても有効です。
しかし、この「かばう姿勢」が長期間続くと、体に癖として定着してしまいます。
しかもこのような癖は、本人がほとんど気づかないうちに体を歪ませていくのです。
以下のようなことが起きるケースもよくあります:
-
「腰が痛くて杖を使っていたら、今度は反対の股関節が痛くなった」
-
「杖を使って数か月後に肩が上がらなくなった」
-
「歩くときに足を引きずるような癖がついてしまった」
こうなる前に、体の左右差や動きのクセを評価し、必要に応じて調整することが重要です。
片側支持による偏りを最小限にする工夫とは?
杖を否定するわけではありません。むしろ、正しく使えば非常に効果的なサポートツールになります。
ここでは「杖を使いながらも、体が傾かないための工夫」を3つ紹介します。
1. 杖の高さは「手首の位置」に合わせる
肘が軽く曲がる程度(約15度〜30度)の高さが理想です。高すぎても低すぎても、肩・腰に負担がかかります。
2. 支持側は「痛い脚と反対側」が基本
たとえば、左脚に痛みがあるなら、右手で杖を持つのが基本です。これによって歩行時のバランスが安定します。
3. 一時的に使い、同時に「体の再教育」も行う
杖を使いながらも、片足立ちやバランストレーニング、体幹強化など、失われた筋力・感覚を回復させるアプローチを並行して行うことが大切です。
まとめ:杖に頼る前に“体の軸”を整える意識を
杖はとても便利な道具です。しかし、使い方を間違えたり、片側支持が長く続いたりすると、体は確実に傾いていきます。そしてそれが新たな痛みや不調を生み出すことにもつながりかねません。
だからこそ、杖に頼る前に
-
今の体のバランスはどうか?
-
体幹はしっかり働いているか?
-
骨盤や背骨は左右対称か?
…といった“身体の軸”を見直すことが非常に重要です。
もし、現在杖を使っていて体に違和感を感じている方、あるいはこれから使うことを考えている方は、ぜひ一度、信頼できる整体院や治療院で体のバランスチェックを受けてみてください。
あなたの体が今、どのように支え合っているのか。
その“全体のつながり”を見極めることが、快適な歩行と長く健康に生きるための第一歩です。
✅ 整体では、あなたの歩行や姿勢をチェックしながら、身体の“軸”を整えるお手伝いができます。
杖を手放すためにも、まずは“体そのもののバランス”から見直してみませんか?
⇩ご予約・お問い合わせはこちら⇩

