近年、SNSや動画サイトで「肩甲骨はがし」という言葉をよく目にします。
実はこの施術法、海外では “Scapular mobilization(肩甲骨モビライゼーション)” と呼ばれ、理学療法やリハビリの一環として行われてきたものです。
日本で「肩甲骨はがし」と呼ばれるのは、肩甲骨の動きを制限している筋膜や筋肉(特に大胸筋・小胸筋・前鋸筋・僧帽筋など)を緩め、骨を“はがすように”自由に動かすという感覚的な表現から来ています。
目次
肩甲骨が動かないと、身体にどんな悪影響が出るのか?
肩甲骨は「腕の動きの土台」であり、同時に「姿勢のバランスセンター」でもあります。
この部分が硬くなると、以下のような問題が全身に連鎖していきます。
① 肩こり・首こり・頭痛の原因に
肩甲骨の可動域が減ると、肩を動かすたびに首や僧帽筋上部に過剰な負担がかかります。
これにより慢性的な首こり・肩こり、さらには緊張型頭痛や眼精疲労を招くことがあります。
② 猫背・巻き肩・ストレートネックを悪化させる
肩甲骨が外転・前傾したまま固まると、自然と背中が丸まり、胸郭が閉じて呼吸も浅くなります。
呼吸筋(特に横隔膜・前鋸筋・肋間筋)の働きが低下するため、疲労が抜けにくくなるのです。
③ 呼吸が浅くなり、自律神経のバランスが乱れる
肩甲骨周囲には自律神経に関係する筋肉(肩甲挙筋や小胸筋など)が多く存在します。
これらが緊張すると胸郭が広がらず、呼吸が浅くなって交感神経が優位に。
結果、慢性的な緊張・不眠・疲労感につながります。
④ 四十肩・五十肩などの関節障害を招く
肩甲骨は上腕骨の動きをサポートする「肩甲上腕リズム」を担っています。
この連動が崩れると、肩関節に過負荷が集中し、炎症や拘縮(いわゆる四十肩・五十肩)の原因になります。
⑤ 腰痛・骨盤の歪みにまで影響する
意外に思われるかもしれませんが、肩甲骨の動きは骨盤とも密接に関係しています。
たとえば右の肩甲骨が外転して固まると、左骨盤が前方に回旋し、体全体がねじれた姿勢になります。
これはアナトミートレインで言う「スパイラルライン(螺旋ライン)」による連動で、上半身の硬さが下半身の歪みとして現れる典型例です。
肩甲骨と骨盤は「連動ユニット」で動く
身体は分断されたパーツではなく、全身が一枚の筋膜ネットワークでつながっています。
特に、肩甲骨と骨盤は“対角線上”でバランスをとり合っています。
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右肩甲骨が下がる → 左骨盤が上がる
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左肩甲骨が外転 → 右骨盤が外旋
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肩甲骨の上方回旋制限 → 骨盤の前傾制限
このように、肩甲骨がスムーズに動かないと、骨盤も正常な可動を失い、結果的に歩行や姿勢全体に影響を及ぼします。
“肩甲骨はがし”の本当の目的は「全身連動の再起動」
単に「肩を楽にする」だけでなく、肩甲骨を動かすことは全身の連動性を取り戻すスイッチでもあります。
・呼吸が深くなる
・姿勢が安定する
・骨盤の動きがスムーズになる
・自律神経が整う
・代謝が上がる
こうした全身的な変化こそが、“肩甲骨はがし”がここまで注目される理由です。
つまり、人気の秘密は「肩甲骨が動くと、全身が変わる」ことにあります。
まとめ:肩甲骨は「動く骨」であってこそ健康を守る
肩甲骨が自由に動く身体は、姿勢も呼吸もエネルギーも循環しています。
逆に、肩甲骨が動かない身体は、肩こり・頭痛・腰痛・疲労・自律神経の乱れといった問題を次々に引き起こします。
“肩甲骨はがし”とは単なる流行ではなく、
**「人間本来の自然な連動を取り戻す健康法」**なのです。
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